2026年台湾採用市場の見通しと、企業が押さえておきたいポイント

2026年台湾採用市場の見通しと、企業が押さえておきたいポイント
台湾で採用をしている日系企業や外資系企業にとって、2025年は2025年は比較的前向きな一年だったと言えます。業績が伸びた企業も多く、2026年についても「さらに成長できそうだ」と見る企業は少なくありません。台湾経済にとっては前向きなニュースですが、採用の現場にいる人事担当者や管理職にとっては、別の難しさも見えてきます。
事業は伸びている。一方で、採用予算や人員計画には限りがある。そして、求める経験やスキルを持つ人材の確保は、多くの企業にとってますます重要なテーマになっています。ここに、2026年の台湾労働市場を考えるうえでの大きなポイントがあります。
Reeracoen Taiwan(リーラコーエン台湾)「2026年 雇用主展望レポート」では、在台日系企業・外資系企業183社の経営層・管理職を対象に、2025年の業績、2026年の採用計画、そして台湾の労働市場にある構造的な課題を調査しています。今回の記事では、その中でも日本人読者や日系企業の皆さまに特に関係の深いポイントを、できるだけわかりやすく整理します。
調査結果からは、企業の成長意欲が引き続き見られます。ただし、採用の難しさは「人がいない」だけではありません。これからは、離職補充のための採用だけでなく、組織を広げるための採用も増えていくため、限られた人材をめぐる競争はさらに強まる可能性があります。
📊 「2026年 雇用主展望レポート」で見えてきたポイント
ポイント 1 — AI・半導体関連の勢いが、台湾全体の成長を後押し:
在台日系企業の57.4%が、2025年に事業成長を実現したと回答しています。また、59.0%の企業が2026年も事業拡大を見込んでいます。
ポイント 2 — 台湾への投資意欲は引き続き安定:
54.6%の企業が、今後3年以内に台湾で積極的または緩やかな投資を行う予定と回答しました。一方で、台湾での事業規模を縮小する予定の企業は2.2%にとどまっています。
ポイント 3 — 昇給・賞与の目安が見えやすくなっている:
台湾市場では、年次昇給率は2.1%〜4.0%程度、平均では約3%が一つの目安です。また、旧正月前後の年終賞与は、引き続き約2か月分に近い水準が多く見られます。
ポイント 4 — 採用課題は「応募数の確保」から「人材とのマッチ度」へ:
48.1%の企業が、最大の採用課題として「応募はあるものの、条件に合う人材が少ない」と回答しています。これは「応募者数が少ない」と答えた企業の20.2%を大きく上回っています。
ポイント 5 — 半導体・AI分野の人材獲得競争は、他業界にも影響:
57.4%の企業が、採用難の主な背景として「労働市場全体における専門人材の不足」を挙げています。特に新竹科学園区は、技術人材を引き寄せる大きな存在として、多くの企業から言及されています。
📈 2025年を振り返る:在台日系企業にとって成長の一年に
調査では、2025年に事業成長を実現した企業が半数を超えました。さらに、2026年の見通しについても、多くの企業が前向きな姿勢を示しています。
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2025〜2026年 企業業績・投資見通し |
回答企業の割合 |
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2025年の業績について「成長した」と回答 |
57.4% |
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2026年も「事業拡大を見込む」と回答 |
59.0% |
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今後3年以内に台湾で「積極的または緩やかな投資」を予定 |
54.6% |
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台湾での事業規模縮小を予定 |
2.2% |
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「市場全体の見通しは楽観的ですが、決して過熱感だけで語れるものではありません。半導体やAIサプライチェーンに近い企業では、実績に基づいた強い自信が見られます。一方で、その周辺以外の企業は、慎重ながらも前向きな姿勢を保っています。どの業界の企業にとっても、今は人材投資を続ける理由があります。ただし、人材市場は引き続き競争が高い状況にあります。そのため、採用判断や選考対応のスピードが、採用結果に影響しやすくなると考えられます。」 — 「2026年 雇用主展望レポート」専門コンサルティングインサイト |
ただし、この成長はすべての業界に均等に広がっているわけではありません。半導体、データセンター、AIサーバー、電子部品などのサプライチェーンに関わる企業では、特に強い成長が見られます。一方で、卸売・小売・一般サービス業などは、台湾国内の消費動向、為替、地政学リスクなどの影響を受けやすい面があります。
そのため、半導体・AI関連のエコシステムに近い企業と、それ以外の企業との間では、提示できる採用条件や人材への訴求力に差が生まれやすくなっています。台湾で採用を行う企業にとって、業界を超えた人材獲得競争を意識しておきたい場面が増えていると言えます。
🔍 2025年の採用実態:中心は「離職補充」、増員はまだ限定的
2025年には、約85%の企業が何らかの採用活動を行いました。ただし、採用人数だけを見ると実態の半分しか見えません。より大事なのは、その採用が何のために行われたのかです。
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2025年 企業の実際の採用人数 |
回答企業の割合 |
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採用なし(0人) |
9.5% |
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1〜2人を採用 |
31.0% |
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3〜5人を採用 |
24.1% |
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6〜10人を採用 |
13.9% |
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11人以上を採用 |
21.5% |
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2025年 企業が採用を行った主な理由 |
回答企業の割合 |
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離職者の欠員補充 |
54.1% |
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既存事業の成長への対応 |
24.0% |
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新規事業・新しい領域への展開 |
8.2% |
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その年は採用活動を行っていない |
13.7% |
企業側から見ると、採用予算や人事の工数の多くが「退職者の後任を確保する」ために使われている状態では、組織の生産性や中長期の成長にも影響が出やすくなります。もちろん、面接や選考プロセスを整えることも大切です。ただ、それと同じくらい、離職が発生しやすい背景を把握し、社員に長く活躍してもらえる環境づくりを考えることも重要です。
たとえば、給与水準、キャリアの見通し、評価制度、上司とのコミュニケーション、雇用主としての見え方などは、採用だけでなく定着にも関係します。採用難を考えるときは、「入口」だけでなく「入社後」まで含めて見直す必要があります。
🚀 2026年の採用計画:欠員補充と増員の差が縮まる
2026年に入ると、企業の採用意欲は引き続き高い状態が続くと見られます。採用予定がある企業の人数規模を見ると、次のような傾向が見えてきます。
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2026年 企業の採用予定人数 |
予定企業の割合 |
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1〜2人の新規採用を予定 |
49.0% |
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3〜5人の新規採用を予定 |
26.5% |
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11人以上の新規採用を予定 |
16.1% |
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「採用の目的が、単なる欠員補充から、事業成長を支える増員へと少しずつ広がり始めていることは、重要な変化です。2026年には、組織を拡大したい企業と、離職者の後任を確保したい企業が、同じ限られた人材市場で人材を探すことになります。マッチ度が課題になっている市場では、採用予算の大きさだけでなく、自社の魅力や社員価値提案(EVP)をわかりやすく伝え、適切な人材に早く出会える仕組みを整えることも重要になります。」 — 「2026年 雇用主展望レポート」専門コンサルティングインサイト |
2026年も「離職者の欠員補充」は41%で最も多い理由です。ただし、2025年の54.1%と比べると、その割合は下がっています。一方で、事業成長や組織拡大を背景にした採用は、2025年の24.0%から2026年には32.8%へ上昇しています。
つまり、台湾の採用市場では、「離職者の後任を確保する採用」と「組織拡大に向けた採用」が、同じ時期に進み始めています。企業にとっては、第3四半期や第4四半期を待つのではなく、早い段階で採用戦略を確認しておくことが大切になります。
🔍 構造的な人材不足:なぜ採用難は自然には解消しにくいのか
積極的な採用計画や拡大志向の人員計画の背景には、共通する構造的な課題があります。今回の調査では、57.4%の企業が採用難の主な理由として「労働市場全体における専門人材の不足」を挙げています。これは、給与水準、知名度、採用プロセスの長さといった個別要因を上回る割合です。
特に多くの企業が言及したのが、新竹科学園区です。竹科は、エンジニアや技術職の人材が集まりやすいエリアとして、台湾の採用市場に大きな影響を与えています。半導体やAI関連企業が提示する給与・待遇水準は高く、すべての企業が同じ条件で競うことは難しい場合があります。
こうした動きは、半導体業界だけにとどまりません。従来型の製造業、物流、建設、一般サービス業などにも、人材獲得競争の影響が及びつつあります。採用難は一時的な景気の波だけで起きているものではなく、台湾で事業を行う多くの企業にとって、長期的に向き合うべきテーマになっています。
💡 2026年に向けて、企業が見直したい人事・採用戦略
2026年の台湾労働市場では、二つの流れが同時に進んでいます。一つは、AI・半導体を中心とした企業成長。もう一つは、業界を超えて続く専門人材不足です。もし2026年の人員計画を2025年の延長線上だけで考えてしまうと、想定以上に採用が難しくなる可能性があります。
実務上は、まず「離職補充」と「事業拡大による増員」を分けて考えることが大切です。同じ採用でも、目的が違えば、予算、スピード、求める人物像、選考で伝えるべき魅力も変わります。
次に、給与・福利厚生の市場比較では、同業他社だけでなく、異業界の動きも意識することが重要です。現在の台湾では、異なる業界の企業が同じような経験・スキルを持つ人材を求めるケースも増えています。特に技術職、営業職、管理部門の専門人材では、候補者が比較する相手が必ずしも同じ業界だけとは限りません。
また、企業としての魅力づけ、つまり雇用主ブランドや社員価値提案(EVP)の重要性も高まっています。候補者に対して、自社で働く意味、成長できる環境、評価制度やキャリアの見通しを、わかりやすく伝えられるかどうかが重要です。
🎯 まとめ
2026年の台湾労働市場には、多くの可能性があります。多くの企業が成長を見込み、台湾への投資意欲も安定しています。一方で、採用の現場では、限られた専門人材をめぐる競争が続くと考えられます。
そのため、これからの台湾採用では、単に候補者数を見るだけでなく、自社に合う人材にどう出会い、どう興味を持ってもらい、入社後の定着につなげていくかが重要になります。量よりもマッチ度、そしてスピードと伝え方が、これまで以上に大切なポイントになっていくでしょう。
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❓ よくある質問(FAQ)
Q1:2026年の台湾労働市場は、日系企業や外資系企業にとってどのような見通しですか?
全体としては前向きな見通しです。調査では、57.4%の在台日系企業が2025年に事業成長を実現したと回答し、59.0%の企業が2026年も事業拡大を見込んでいます。また、54.6%の企業が今後3年以内に台湾で投資を継続または拡大する予定です。
Q2:2026年の採用理由は、2025年と比べてどう変わっていますか?
2026年も欠員補充が最も多い理由で、割合は41%です。ただし、2025年の54.1%と比べると下がっています。一方で、事業成長や拡大を背景にした採用は、2025年の24.0%から2026年には32.8%へ上昇しています。
Q3:在台日系企業は、2026年にどのくらいの人数を採用する予定ですか?
採用予定がある企業のうち、49.0%が1〜2人、26.5%が3〜5人の採用を予定しています。また、16.1%の企業は11人以上の採用を計画しており、大型採用は半導体サプライチェーン関連企業に多く見られます。
Q4:企業の業績が伸びているのに、なぜ台湾の人材不足は改善しにくいのでしょうか?
背景には、専門人材の不足という構造的な課題があります。57.4%の企業が、採用難の主な理由として労働市場全体における専門人材不足を挙げています。新竹科学園区やAI・半導体関連企業が技術人材を強く引き寄せていることも、他業界の採用に影響しています。
Q5:この調査のデータはどこから来ていますか?
本記事は、Reeracoen Taiwanの「2026年 雇用主展望レポート(第15版)」をもとにしています。調査は2026年1月30日から2月13日にかけて、在台日系企業・外資系企業の経営層・管理職183名を対象に実施されました。
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作者
Valerie Ong
リーラコーエングループ リージョナルマーケティングマネージャー
Valerieは、リーラコーエンのアジア地域におけるコンテンツ制作と市場インサイトの発信をリードしています。各国の専門コンサルタントチームと連携し、採用データ、給与基準、労働市場のトレンドを、台湾の雇用主とビジネスパーソンに役立つ実務的な情報へと整理しています。
その調査成果は、リーラコーエンの独自調査である「Salary Guide」「Hiring Pulse」「Hiring Manager Survey」などをもとにしています。
参考資料
● 第15期 台湾雇用主展望レポート(Reeracoen Taiwan Co., Ltd.)

Disclaimer
This article is intended for general informational purposes only and reflects market observations at the time of publication. Labour market conditions, hiring trends, and salary benchmarks may vary by industry, company size, and economic environment. Statistics and data referenced from third-party sources are attributed to their respective publishers. Readers are encouraged to verify specific details and seek professional advice before making employment or business decisions. No part of this article may be reproduced without prior written permission from Reeracoen Singapore Pte. Ltd.


