応募はあるのに、採用したい人材に出会えない183社が語る2026年台湾採用市場のリアル
応募はあるのに、採用したい人材に出会えない183社が語る、2026年台湾採用市場のリアル
2026年に台湾で採用を行う日系企業にとって、「履歴書の数」は必ずしも一番の課題ではありません。応募は来ている。けれど、その中で本当に求める経験やスキルに合う候補者がなかなか見つからない。ここに、今の採用市場の難しさがあります。
一方で、採用施策の中には、応募者数の確保を重視してきた時期の考え方が、現在も一部残っているケースがあります。求人の露出を増やす、媒体を広げる、広告を追加する。もちろん大切な施策ですが、現在の課題に対しては、別の視点からの見直しも必要になるかもしれません。
これは、リーラコーエン台湾が発表した「2026年 台湾雇用主展望レポート」で、特に注目したいポイントです。本調査は、台湾の日系企業の経営意向を継続的に追ってきた調査の一つで、今回で第15回を迎えました。2026年1月30日から2月13日にかけて、台湾における在台日系企業183社の管理職層を対象に、経営状況、採用意欲、給与・福利厚生、人材獲得の課題などを調査しています。
最も印象的なのは、48.1%の企業が、現在の採用における最大の課題として「応募はあるが、本当に条件に合う人材が少ない」と回答している点です。一方で、「応募者数が少ない」と回答した企業は20.2%。つまり、応募数そのものよりも、マッチ度の高い人材に出会えるかどうかが大きなテーマになっています。
これは単なる表現の違いではなく、採用課題の質が変化していることを示していると考えられます。だからこそ、これまでの施策に加えて、マッチ度を高める視点がより重要になってきています。
📊 「2026年 台湾雇用主展望レポート」5つのポイント
ポイント1 — AI・半導体の成長が、台湾市場全体を押し上げている
AIと半導体関連産業は、台湾市場を動かす大きなエンジンになっています。2025年に業績が実質的に伸びたと回答した在台日系企業は57.4%。さらに、2026年に事業拡大を見込む企業は59%にのぼりました。
ポイント2 — 台湾への投資意欲は引き続き安定している
台湾市場への中長期的な期待も堅調です。今後3年以内に台湾で「積極的または安定的な投資」を行う予定の企業は54.6%。一方、台湾での事業規模を縮小すると回答した企業は2.2%にとどまりました。
ポイント3 — 給与水準の目安が明確になり、定着にも影響している
在台日系企業の給与・福利厚生には、一定の市場目安が見えてきています。年間昇給率は2.1%〜4.0%が一つのレンジで、市場平均は約3%。旧正月の年末ボーナス(Lunar New Year Bonus)の中央値は、約2.0カ月で推移しています。
ポイント4 — 採用の課題は「応募数」から「マッチ度」へ移っている
採用市場の悩みは、構造的に変わりつつあります。48.1%の企業が「本当に条件に合う人材が少ない」ことを最大の課題に挙げた一方、「応募者数が少ない」と回答した企業は20.2%でした。
ポイント5 — 半導体・AIの人材獲得競争は、他業界にも広がっている
半導体・AI関連企業が持つ人材を引き寄せる力は、従来型産業や非テック業界にも影響しています。57.4%の企業が、採用難の根本要因として「労働市場全体の構造的な人材不足」を挙げており、自由回答でも「新竹サイエンスパーク(Hsinchu Science Park)」による業界を越えた採用競争への言及が見られました。
📈市場への期待が高まる一方で、採用には工夫が求められています
採用データを詳しく見る前に、まずはその背景にある市場全体の空気感を押さえておきたいところです。2026年の調査から見える在台日系企業の姿は、「慎重ではあるものの、前向き」というものです。
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2025〜2026年 企業経営・投資見通し |
回答割合 |
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2025年の業績が実質的に成長した |
57.4% |
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2026年に事業拡大を見込んでいる |
59% |
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今後3年以内に台湾で「積極的または安定的」な投資を 予定している |
54.6% |
|
台湾事業の縮小を予定している |
2.2% |
この数字を見る限り、日系企業が台湾市場への期待を失っているわけではありません。むしろ、投資意欲があるからこそ、より良い人材を採用したいというニーズが高まっていると考えられます。その成長を支えているのが、台湾の「半導体・AIインフラのエコシステム」です。データセンター、AIサーバー、電子部品、研究開発(R&D)拠点など、成長の波は半導体製造だけにとどまらず、周辺産業にも広がっています。ただし、こうした市場の勢いは、同時に人材採用の競争を強める要因にもなっています。
❌なぜ「応募数を増やす」だけでは採用課題を解決しにくいのか?
これまで、採用がうまく進まないときの一般的な対応は、「もっと広く募集する」ことでした。求人サイトへの掲載を増やす、広告予算を上げる、候補者検索の範囲を広げる。応募者数が本当に不足している場合には、こうした方法は有効です。
しかし、課題の中心が「マッチ度」に移っている場合、この方法だけでは十分ではありません。2026年の調査データは、台湾の雇用主がいま直面しているボトルネックをかなり明確に示しています。
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主な採用課題 |
回答割合 |
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応募はあるが、本当に条件に合う人材が少ない |
48.1% |
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応募者数が少ない |
20.2% |
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面接段階で候補者を正確に評価しにくい |
14.2% |
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内定辞退が多い、または入社後の早期離職がある |
9.3% |
|
大きな課題は感じていない |
8.2% |
「今回の調査から、台湾市場の採用課題は、すでに応募数の確保だけでなく、候補者とのマッチ度を重視する段階に移りつつあります。多くの企業にとって大きな課題となっているのは、単に人を集めることだけではなく、『自社に合う人材に出会えない』ことです。
この違いはとても重要です。必要なのは、より精度の高い人材サーチ、候補者に伝わる雇用主としてのブランドづくり、そして優秀な候補者に対して『なぜこの会社を選ぶのか』が伝わるストーリーです。」
— Reeracoen Taiwan 副総経理 松原大樹
🔍 人材と企業の「ミスマッチ」はどこから生まれるのか?
本レポートでは、採用が難しくなっている根本的な理由についても、企業に回答を求めています。結果を見ると、これは一つの施策だけで解決できる問題ではなく、複数の要因が重なった構造的な課題であることがわかります。
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採用が難しくなっている主な理由 |
回答割合 |
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労働市場全体における構造的な人材不足 |
57.4% |
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自社の給与・福利厚生が市場競争力に欠ける |
39.6% |
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所属業界のイメージや魅力が伝わりにくい |
28.4% |
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競合他社の内定条件との差がある |
24.9% |
|
自社ブランドの市場での認知度が不足している |
23.1% |
|
新人教育やチームへの受け入れ体制が 十分ではない |
11.8% |
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面接・選考評価の仕組みに改善余地がある |
9.5% |
|
社内の採用プロセスや対応スピードに課題がある |
4.1% |
採用課題の本質が「マッチ度」にある場合、採用の入口を広げるだけでは、かえって現場の負担が増えることがあります。確認すべき履歴書が増え、人事責任者や採用担当責任者の時間が、条件に合わない応募への対応に取られてしまうためです。
その結果、本当に会うべき候補者への対応が遅れ、選考スピードの速い他社へ先に進んでしまうこともあります。
💡 では、台湾で採用する企業は何を見直すべきか?
今回の調査結果から、2026年後半に向けて人事責任者や採用担当責任者が優先的に見直したいポイントは、主に4つあります。まずは、その前提となる台湾市場の給与・福利厚生の市場水準を整理してみます。
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給与・福利厚生の目安 |
2026年の市場水準 |
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年間昇給率の目安 |
2.1%〜4.0% |
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市場平均の昇給率 |
約3% |
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年終ボーナスの中央値 |
約2.0カ月 |
1️⃣ 市場水準を踏まえた給与設計が、候補者に選ばれる土台になる
上記の市場水準は、採用競争に参加するための「スタートライン」と考えた方がよいかもしれません。給与・福利厚生が市場水準と大きく離れている場合、候補者の比較検討において課題になりやすい傾向があります。市場水準を満たすことは、採用上の大きなアピールというより、まず候補者に検討してもらうための土台づくりです。
2️⃣ 人材が集まる場所で、雇用主としての見え方を整える
今回の調査では、23.1%の企業が「自社ブランドの認知度不足」を課題に挙げ、28.4%の企業が「業界の魅力が伝わりにくい」と回答しています。特に半導体や金融以外の業界では、雇用主としての見え方を整えることが重要です。日本では有名な企業でも、台湾の候補者には事業内容や働く魅力が十分に伝わっていないことがあります。ここは見落としやすい重要なポイントです。
3️⃣ 解決すべきは「履歴書の数」ではなく「精度」
仕事内容や条件の伝え方が十分に整理されていない場合、求職者との認識差が生まれやすく、結果として採用工数が増えることがあります。広告を広げる前に、必須条件と歓迎条件を分ける、実際の業務内容を具体的に書く、候補者が判断しやすい情報を入れるなど、求人の精度を高めることが大切です。事前スクリーニングの仕組みも、あわせて見直したいポイントです。
また、日本企業の文化と台湾の人材市場の両方を理解している採用パートナーを活用することで、企業側の希望と候補者側の期待を整理しやすくなります。
4️⃣ 半導体・AIの人材獲得競争を「テック業界だけの課題」と考えない
製造業、物流業、建設業、サービス業などの従来型産業にも、人材獲得競争の影響は広がっています。面接日程が決まる前に、候補者が半導体関連企業へ進んでしまうケースもあります。同業他社だけを比較対象にするのではなく、台湾全体の人材の流れを見ながら、条件や訴求ポイントを見直すことが重要です。
🎯 まとめ
台湾の労働市場では、求職者からの応募自体は一定数見られます。むしろ、多くの企業には応募が届いています。足りないのは、候補者のスキルや志向と、成長している産業で企業が本当に求めているものとの「精度の高いマッチング」です。
2026年、企業が引き続き「応募数を増やすこと」だけに注力していると、採用課題が解消されにくい状況が続く可能性があります。これから重要になるのは、精度の高い採用、雇用主としての魅力発信、そして台湾の人材がどの業界に引き寄せられているのかを理解することです。そこを押さえられる企業ほど、年末に向けても必要な人材に出会いやすくなるはずです。
次の一歩
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よくある質問
Q1:2026年、台湾の日系企業が直面している一番大きな採用課題は何ですか?
「2026年 台湾雇用主展望レポート」では、48.1%の在台日系企業が、最大の採用課題として「応募はあるが、本当に条件に合う人材が少ない」と回答しました。一方、「応募者数が少ない」と答えた企業は20.2%でした。
Q2:なぜ日系企業は台湾で採用に苦戦しているのでしょうか?
主な理由として、労働市場全体の構造的な人材不足(57.4%)、給与・福利厚生の競争力不足(39.6%)、業界イメージや魅力の伝わりにくさ(28.4%)、企業ブランドの認知度不足(23.1%)などが挙げられています。特に、半導体関連産業による業界を越えた人材獲得競争も、多くの企業が意識しているポイントです。
Q3:2026年の台湾日系企業の昇給やボーナスの目安はどのくらいですか?
今回の調査では、年間昇給率の目安は2.1%〜4.0%、市場平均は約3%とされています。また、旧正月における年末ボーナスの中央値は約2.0ヶ月です。
Q4:台湾の人材不足は半導体業界だけの問題ですか?
いいえ。半導体・AI関連の採用需要は強いですが、その影響は製造業、物流業、建設業、サービス業などにも広がっています。特に技術職やエンジニア職では、業界を越えて候補者が比較されるケースが増えています。
Q5:「台湾雇用主展望レポート」はどのように調査されたものですか?
本レポートは、2026年1月30日から2月13日にかけて、台湾全土の在台日系企業183社の管理職層を対象に実施された構造化アンケート調査です。台湾の日系企業の経営・採用意向を把握するうえで、継続的に参考にされている調査の一つです。
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著者
Valerie Ong
Reeracoen Group リージョナルマーケティングマネージャー
Valerieは、Reeracoenのアジア地域におけるコンテンツ制作と市場インサイトを担当しています。専門の採用コンサルタントチームと連携し、採用データ、給与水準、労働市場のトレンドを、台湾の雇用主やビジネスパーソンに向けた実務的な情報として発信しています。
調査・分析は、Reeracoenの独自調査プロジェクトである年次「Salary Guide」、「Hiring Pulse」、「Hiring Manager Survey」などをもとにしています。
参考資料
● 第15回 台湾雇用主展望レポート(Reeracoen Taiwan Co., Ltd.)

Disclaimer
This article is intended for general informational purposes only and reflects market observations at the time of publication. Labour market conditions, hiring trends, and salary benchmarks may vary by industry, company size, and economic environment. Statistics and data referenced from third-party sources are attributed to their respective publishers. Readers are encouraged to verify specific details and seek professional advice before making employment or business decisions. No part of this article may be reproduced without prior written permission from Reeracoen Singapore Pte. Ltd.
