半導体不足より深刻?2026年、台湾の日系企業で不足する「中日バイリンガル技術人材」――データから読み解く採用市場と人材戦略 

NEWSAugust 17, 2026 08:00

 

半導体不足より深刻?2026年、台湾の日系企業で不足する「中日バイリンガル技術人材」――データから読み解く採用市場と人材戦略 

 

台湾で事業を展開する日系企業や外資系企業、グローバルなサプライチェーンに関わる企業にとって、人材の確保は2026年も大きなテーマの一つとなっています。特に最近は、TSMC(台湾積体電路製造)の大規模採用や、Tesla(テスラ)をはじめとするグローバル企業による経験豊富な技術人材の採用が注目を集めています。
その一方で、台湾の日系企業の採用現場では、別の難しさも見えてきています。それが、「専門的な技術力」と「中国語・日本語でのコミュニケーション力」を兼ね備えた人材の不足です。
台湾で専門人材の採用が難しくなっていること自体は、決して新しい話ではありません。ただ、現在の採用環境は、世界的に見てもかなり厳しい水準にあります。
最新の国際的な人材不足に関する調査では、台湾の雇用主の90%が、必要なスキルを持つ人材の採用に難しさを感じていると回答しています。世界平均の77%を上回っており、台湾が人材確保の難しい市場の一つであることがわかります。
さらに、台湾で事業を展開する日系製造業や半導体サプライチェーン関連企業では、採用条件がより複雑になるケースがあります。製造プロセス、機械・電気、研究開発などの専門知識に加え、日本本社や日本人管理職、技術チームとスムーズに連携できる日本語力が求められるためです。
つまり、単に「優秀なエンジニア」を探すだけではなく、技術と語学の両方を高いレベルで備えた人材を探すことになります。当然ながら、この2つの条件が重なるほど候補者の母数は限られてきます。
2026年の台湾採用市場では、こうした中日バイリンガルの技術人材をどのように採用し、育成していくかが、日系企業にとってこれまで以上に重要なテーマになっています。

 

データから見る、中日バイリンガル技術人材の採用難

では、なぜ中日バイリンガルのエンジニアは、これほど採用が難しいのでしょうか。
ここで大切なのは、必ずしも個々の企業の採用方法だけに原因があるわけではない、という点です。背景には、台湾の採用市場全体で進んでいる構造的な変化があります。まずは、現在確認できる主なデータを整理してみましょう。

2026 台灣雙語人才市場核心觀察指標 數據背後的真實市場含義

台湾90% vs 世界平均77%の人材不足率

台湾では90%の雇用主が人材採用に難しさを感じており、世界平均の77%を上回っています。もともと人材確保が容易ではない市場で、さらに専門技術や語学力などの条件が加わると、候補者の母数はより限られてきます。

大手テクノロジー企業による積極採用

半導体やAI関連産業の成長に伴い、TSMCでは2026年に8,000人規模の採用が計画されるなど、技術人材への需要が高まっています。Teslaをはじめとするグローバル企業も採用を進めており、従来型製造業や半導体以外の分野では、人材獲得競争の影響を受けるケースがあります。

公開給与データだけでは見えにくい「語学力」の価値

104人資学院やグローバル人材紹介会社などが公開する給与ガイドでは、「日本語が堪能」という条件を加えた場合の給与差が、エンジニア職ごとに細かく数値化されていないことが一般的です。そのため、採用時の給与設定に迷うケースもあります。

2026年の外国専門人材関連制度

台湾では2026年1月1日から、改正された「外国専門人材誘致及び雇用法」が施行されました。台湾で学位を取得した外国人材の永住申請に必要な居留期間の短縮など、人材供給の面でも新たな動きが始まっています。

 

日本語ができるエンジニアは、どれくらい給与が上がる?

採用の現場でよく聞かれるのが、次のような質問です。「実務経験が5年あり、日本語能力試験N1レベルの日本語力を持つプロセスエンジニアの場合、給与相場はいくらくらいなのでしょうか?」
人事担当者としては、採用予算を考えるうえでも気になるところだと思います。
ただ、現時点では、この質問に対して「相場は○○元」「通常のエンジニアより○%高い」と一律に答えられるだけの公開データは、まだ十分とはいえません。一般的な給与調査では、機械・電気エンジニア、オートメーションエンジニア、材料研究開発など、職種ごとの平均給与や中央値は確認できます。
一方で、そこに「ビジネスレベルの日本語」という条件を加えた場合、給与がどの程度変わるのかまで細かく示したデータは限られています。では、日本語力は給与に影響しないのでしょうか。
もちろん、そうとは限りません。
採用市場では、企業側のニーズが高い一方で、その条件を満たす人材が少ないほど、希少性は高くなります。
たとえば、日本の技術本部との打ち合わせや、日本人エンジニアとの日常的な連携が必要なポジションでは、日本語力は単なる「歓迎条件」ではなく、業務を進めるうえで重要なスキルになります。実際の採用現場でも、技術力と日本語力の両方を持つ候補者が、複数企業から同時にオファーを受けるケースは珍しくありません。
こうした人材の採用では、給与水準だけでなく、選考からオファーまでのスピードも重要なポイントになっています。

 

採用の選択肢が広がる?2026年の外国人材・留学生関連制度

中日バイリンガル人材の採用競争が続く一方で、2026年に始まった新しい制度は、企業にとって採用の選択肢を広げるきっかけになるかもしれません。
台湾政府は、構造的な人材不足への対応の一環として、2026年1月1日から改正された「外国専門人材誘致及び雇用法」を施行しました。今回の改正では、台湾で学位を取得した外国人材が永住を申請する際に必要となる居留期間が短縮されています。博士号取得者は3年、修士号取得者は2年、学士号取得者は1年、それぞれ必要な期間を短縮できる仕組みです。また、一定の条件を満たす華僑・外国人留学生についても、卒業後に台湾で就職活動を続けやすくするための制度が整備されています。これは、台湾で採用活動を行う日系企業にとっても注目しておきたい変化です。
台湾の大学で理工系分野を学んでいる外国人・華僑学生の中には、日本語を学んでいる人や、日本の文化・ビジネスに関心を持つ人もいます。これまで採用対象としてあまり接点のなかった層にも目を向けることで、中日バイリンガル人材の候補者層を広げられる可能性があります。
特に、卒業後も台湾で長く働きたいと考えている若手人材は、企業にとって将来のバイリンガル人材を育てていくうえで、一つの選択肢になりそうです。

 

人事担当者が押さえておきたい、バイリンガル人材採用の3つのポイント

では、採用市場が厳しいなかで、企業側にはどのような選択肢があるのでしょうか。ここからは、中日バイリンガル技術人材の採用を考える際に、検討しておきたい3つのポイントをご紹介します。

1.外部の給与データだけでなく、自社の採用実績も蓄積する

市場の給与調査は、採用条件を考えるうえで重要な参考資料です。ただし、中日バイリンガルエンジニアのように人材の母数が限られる職種では、外部データだけでは実際の相場をつかみにくいことがあります。

そこで役立つのが、自社の採用活動から得られる情報です。

候補者が他社からどの程度のオファーを受けていたのか、どの条件で辞退したのか、現職からどの程度のカウンターオファーを提示されたのか。こうした情報を継続的に記録していくことで、自社が採用している業界・職種により近い「実際の市場感」が見えてきます。条件に合う人材が現れたときに、社内でスムーズに判断するためにも、こうしたデータの蓄積は役立ちます。

 2.「技術を優先し、日本語は入社後に育てる」という考え方

採用時点で「高い技術力」と「流暢なビジネス日本語」の両方を必須にすると、どうしても候補者は限られてしまいます。そこで、一つの方法として考えられるのが、技術力を優先して採用し、日本語は入社後に育成するという考え方です。たとえば、技術力や経験が十分にあり、仕事に対する考え方も自社と合っているものの、日本語についてはまだ基礎レベルというエンジニアも採用対象に含めます。そのうえで、会社がビジネス日本語研修を用意したり、語学学習費用を補助したりする方法です。

もちろん、すべての職種で実現できるわけではありません。入社直後から日本本社との高度な技術折衝が必要なポジションであれば、一定以上の日本語力が必要になるでしょう。

一方、入社後に育成する余地があるポジションであれば、語学条件を少し柔軟にするだけでも、候補者の幅が広がる可能性があります。

3.2026年の制度変更を踏まえ、外国人・華僑学生にも目を向ける

もう一つ検討したいのが、台湾の大学で学ぶ外国人・華僑学生との接点を増やすことです。2026年の制度変更により、台湾で学んだ外国人材にとって、卒業後も台湾でキャリアを築く選択肢が広がっています。企業側も、大学の国際事務部門や学生コミュニティなどと連携し、インターンシップや産学連携を通じて学生との接点を持つことが考えられます。

採用が必要になってから候補者を探すだけでなく、学生の段階から自社や業界について知ってもらう。こうした中長期的な取り組みも、将来のバイリンガル人材を確保するうえで一つの方法です。

 

まとめ:採用条件を少し広げることが、新しい人材との出会いにつながる

台湾で中日バイリンガルの技術人材を採用することが難しくなっている背景には、台湾全体の人材不足だけでなく、半導体やAI関連産業を中心とした技術人材への需要拡大があります。そのため、「募集してもなかなか条件に合う人が見つからない」という状況は、決して一社だけの問題ではありません。むしろ、現在の市場環境では、多くの企業が似た課題を抱えていると考えたほうが自然でしょう。

だからこそ大切なのは、これまでの採用条件をそのまま続けることだけではなく、どこまで条件を柔軟にできるのかを改めて考えてみることです。

外部の給与データに加えて、自社の採用実績を蓄積する。日本語力を採用時点ですべて求めるのではなく、入社後に育てる選択肢も検討する。そして、台湾で学ぶ外国人・華僑学生など、これまでとは異なる人材層にも目を向ける。こうした取り組みを少しずつ組み合わせることで、自社に合った人材と出会える可能性は広がります。

2026年の台湾採用市場では、「すでに完成された人材を探す」だけではなく、採用対象を広げ、入社後も含めて人材を育てていく視点が、これまで以上に重要になっていきそうです。

 

台湾で採用を行う企業・人事担当者の方へ

「技術面では条件に合うのに、日本語力まで求めると候補者がなかなか見つからない」
台湾で採用活動を行っていると、このようなケースに直面することがあります。また、中日バイリンガル技術人材については、公開されている給与データだけでは、実際の市場相場を判断しにくいこともあります。

立樂高園(Reeracoen Taiwan)では、台湾の採用市場と日台双方のビジネス文化を理解した採用コンサルタントが、日系企業・グローバル企業の採用をサポートしています。「現在の条件で採用できる可能性を知りたい」「給与水準が市場に合っているか確認したい」「候補者の幅をもう少し広げたい」といった場合も、まずはお気軽にご相談ください。



👉貴社の採用状況に合わせて、中日バイリンガル人材の採用方法を一緒に考えてみませんか。

 

中日バイリンガルの技術職・転職を検討している方へ

エンジニアとしての専門性に加えて、中国語と日本語の両方を仕事で使えることは、台湾でキャリアを考えるうえで大きな強みの一つになります。台湾には半導体大手だけでなく、機械、設備、化学、材料、自動化など、さまざまな分野で事業を展開する日系企業があります。
企業によって、仕事の内容や給与、福利厚生はもちろん、働き方やキャリア形成に対する考え方も異なります。転職を考える際は、企業の知名度や給与だけでなく、
「自分の技術経験をどこで活かせるのか」
「日本語力をどのような仕事で活かしたいのか」
「これからどのようなキャリアを築いていきたいのか」
といった視点から求人を見てみるのもおすすめです。
立樂高園(Reeracoen Taiwan)では、台湾の日系企業を中心とした求人情報や採用市場の情報をもとに、転職活動をサポートしています。


 

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よくある質問

Q1:台湾の給与調査を見れば、中日バイリンガルエンジニアの給与相場はわかりますか?

A:ある程度の参考にはなりますが、「中日バイリンガル」という条件まで含めた正確な相場を把握するのは簡単ではありません。
104の給与情報やグローバル人材紹介会社の給与ガイドでは、エンジニア職ごとの給与水準を確認できますが、「日本語ができることで給与が何%上がるのか」といったデータは限られています。
実際には、職種、経験年数、業界、日本語を使う頻度やレベル、その時点での採用市場の需給などを踏まえて判断する必要があります。


 

Q2:台湾の技術人材不足は、世界と比べても深刻なのでしょうか?

A:2026年に公表された国際的な労働市場調査では、台湾の雇用主の90%が、必要なスキルを持つ人材の採用に難しさを感じていると回答しています。
世界平均は77%となっているため、台湾は世界的に見ても人材確保が難しい市場の一つといえます。


 

Q3:2026年に台湾の外国人材制度はどのように変わりましたか?

A:2026年1月1日から、改正された「外国専門人材誘致及び雇用法」が施行されました。
台湾で学位を取得した外国人材については、永住申請に必要となる居留期間が、博士号取得者は3年、修士号取得者は2年、学士号取得者は1年短縮される仕組みとなっています。
また、一定の条件を満たす外国人・華僑学生について、卒業後も台湾で求職活動を続けやすくする制度が整備されています。
こうした変更により、企業側にとっても、台湾で学んだ外国人材を採用候補として検討できる機会が広がっています。

 

Q4:台湾の日系企業がバイリンガル人材を採用する際、どのような点を見直すとよいでしょうか?

A:まず考えたいのは、「本当に採用時点で日本語が高いレベルで必要なのか」という点です。
業務上必要であれば当然重要な条件ですが、入社後の育成が可能なポジションであれば、技術力を優先し、日本語は研修などで伸ばしてもらう方法もあります。
また、外部の給与データだけに頼るのではなく、自社の過去の採用実績や候補者から得た情報を蓄積しておくことも役立ちます。
さらに、台湾の大学で学ぶ外国人・華僑学生などにも採用対象を広げることで、これまで出会えなかった人材と接点を持てる可能性があります。

 

Q5:中日バイリンガルエンジニアが半導体以外の日系企業へ転職するメリットはありますか?

A:十分にあります。

台湾には半導体関連企業だけでなく、機械、設備、化学、材料、自動化など、さまざまな分野の日系企業が進出しています。

こうした企業では、日本本社や日本人技術者との連携が必要になることも多いため、技術的な専門性に加えて日本語でコミュニケーションできることが強みになるケースがあります。

企業によって仕事内容や待遇、働き方、キャリアパスは異なるため、給与だけでなく、自分の経験をどのように活かせるかという視点で比較してみるとよいでしょう。

 

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作者

Valerie Ong

リーラコーエングループ リージョナルマーケティングマネージャー

Valerieは、リーラコーエンのアジア地域におけるコンテンツ制作と市場インサイトの発信をリードしています。各国の専門コンサルタントチームと連携し、採用データ、給与基準、労働市場のトレンドを、台湾の雇用主とビジネスパーソンに役立つ実務的な情報へと整理しています。

その調査結果は、リーラコーエンの独自調査である「Salary Guide」「Hiring Pulse」
「Hiring Manager Survey」などをもとにしています。


翻訳協力:Arisa Sasaki

參考資料

  • “Why Taiwan's Push To Attract International Talent Is Faltering,” TaiwanPlus, 2026
  • Talent Taiwan Official Website, National Development Council — 2026 Foreign Professional Act amendments, talent.nat.gov.tw
  • 104 Job Bank, “Jobs for International Talents in Taiwan” — 2026 Work Permit Exemption scheme, go.104.com.tw/expats

 

 

Disclaimer

This article is intended for general informational purposes only and reflects market observations at the time of publication. Labour market conditions, hiring trends, and salary benchmarks may vary by industry, company size, and economic environment. Statistics and data referenced from third-party sources are attributed to their respective publishers. Readers are encouraged to verify specific details and seek professional advice before making employment or business decisions. No part of this article may be reproduced without prior written permission from Reeracoen Singapore Pte. Ltd.