台湾「超高齢社会」で変わる人材戦略——在台日系企業が今から始める現地リーダー育成

NEWSAugust 31, 2026 17:31

会議室で業務の引き継ぎや人材育成について話し合う日本人駐在員と台湾の現地管理職。台湾の日系企業における現地リーダー育成と後継者計画をイメージした写真。

台湾「超高齢社会」で変わる人材戦略――在台日系企業が今から始める現地リーダー育成

 

 台湾は2025年、65歳以上の人口が総人口の20%を超え、国家発展委員会(NDC)が定義する「超高齢社会」に入りました。この人口構造の変化は、企業にとって単なる統計上の話ではありません。「豊富な経験を持ち、次の管理職を担える人材をどう確保し、育てていくか」という経営課題に直結しています。
 特に台湾の日系企業や外資系企業にとって、本社からの駐在員にどこまで経営・管理を委ねるのか、そして台湾の現地人材がどこまで重要ポジションを担える体制をつくるのかは、今後ますます重要なテーマになりそうです。

 

データで見る:台湾の高齢化と見過ごされがちなシニア人材

指標

主なデータ・市場状況

人口構造の節目

台湾は2025年に「超高齢社会」に入り、65歳以上の人口比率が20%を超えました(国家発展委員会データ)。

「退職後も働きたい」意向

天下雑誌「銀天下」とDBS Foundationによる2026年の調査では、未退職の回答者の77%が、退職後もパートタイムや柔軟な勤務形態で働きたいと回答しています。

再就業の実態とのギャップ

働き続けたい意向は77%に上る一方、すでに退職した回答者のうち実際に再就業している人は27%でした。意向と実際の就業には大きな差があります。

退職年齢と非自発的離職

すでに退職した回答者の平均退職年齢は61歳で、そのうち2割は本人の希望によらない早期退職でした。 

 

 こうした数字から見えてくるのは、「経験豊富な人材が働きたくない」のではなく、働き続けたいという意向と、実際の就業機会との間にはまだギャップがあり、企業にとっても柔軟な働き方や知識継承のあり方を考える余地があるといえます。

 

なぜ今、台湾の日系企業にとって重要なのか?

 台湾の日系企業では、重要な管理職を日本本社からの駐在員が担うケースも少なくありません。背景には本社のガバナンス方針や人事制度などさまざまな事情がありますが、一方で、現地人材を後継候補として計画的に育成する『サクセッションプランニング』については、企業によって取り組み方や整備状況が異なります。
 台湾の高齢化が進むなか、経験豊富な現地の管理職・専門人材 は今後さらに貴重になります。その一方で、半導体をはじめとするテクノロジー企業や関連サプライチェーンでは、管理職・専門人材の採用競争が続いています。駐在員が中心となって重要ポジションを担う体制では 、人事異動や本社方針の変更があった際に、現地組織でリーダー層の空白が生じるリスクもあります。

 

 「経験を次世代につなぐ:シニア人材による知識継承」 

 「退職後も働きたい」と考える人が77%いる一方、実際に再就業している人は27%。この差は、企業が次世代のリーダーを育てるうえで見過ごしやすいポイントです。退職を迎えるベテラン社員は、業務知識だけでなく、顧客との関係、判断の勘所、社内文化といった“言語化しにくい知見”を多く持っています。こうした資産は、外部採用だけでは短期間に補いにくいものです。
 そこで、定年を一つの区切りとしつつも、希望や業務内容に応じて、パートタイム、メンター、顧問などの形で柔軟に関わってもらう仕組みが考えられます。経験豊富な先輩社員が次世代の現地リーダーに知識や判断基準を引き継げる体制をつくることで、後任者が一人で手探りするよりも、スムーズな引き継ぎにつながります。

 

2027年を見据えて:現地リーダー層を育てる3つの実践ステップ

 

後継候補は早めに選び、育成を始める
経験豊富な人材の確保が難しくなることを見据え、重要な管理職については2~3年前から2~3名程度の現地候補者を選び、必要な経験や育成機会を計画的に用意しておくことが重要です。異動や退職が決まってから急いで外部採用を始めるより、選択肢を広げやすくなります。

退職前後の「移行期」を支える顧問・メンター制度を整える:
退職後も働きたいというニーズを活かし、パートタイム顧問、技術アドバイザー、メンターなどの役割を設計します。組織に蓄積された知識を残しながら、世代間の引き継ぎをよりスムーズに進めることができます。

昇進前から、現地の有望人材に「実際の意思決定」を任せる:
役職名が変わる日まで権限を与えないのではなく、段階的に意思決定の範囲を広げていくことがポイントです。昇進前にリーダーとしての適性を確認できるだけでなく、本人や周囲にとっても、次の役割へ移行する準備期間になります。

 

まとめ

 台湾の超高齢化は、今後の人材供給、とりわけ経験豊富な管理職・専門人材の確保に影響を与えていきます。在台日系企業にとって大切なのは、駐在員の力を活かしながら、同時に現地人材が経営や管理を担える仕組みを計画的につくることです。さらに、退職を迎えるベテラン人材の知見を次世代へつなげることで、2027年以降も変化に対応しやすい、持続的な組織づくりにつながります。

 

企業・人事担当者の方へ

 「管理職の退職が近いものの、後継候補がまだ明確ではない」「駐在員の交代時に引き継ぎが難しい」といった課題がある場合は、現在の後継者育成や知識継承の仕組みを一度見直してみるのも一つの方法です。Reeracoen Taiwanでは、台湾の人材市場を踏まえた採用・人材戦略についてご相談いただけます。

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よくある質問 FAQ

Q1:台湾が「超高齢社会」に入ったとは、どういう意味ですか?

A:国家発展委員会の定義では、65歳以上の人口が総人口の20%を超える社会を「超高齢社会」としています。台湾は2025年にこの水準に達しました。

 

Q2:なぜ今、在台日系企業は「現地リーダー層」の育成を重視する必要があるのでしょうか?

A:台湾では高齢化が進み、経験豊富な現地人材の確保が今後さらに重要になります。また、経験豊富な中堅・管理職層の人材 をめぐる採用競争も続いています。駐在員を活用しつつ、現地人材による後継体制も整えておくことで、人事異動や組織変更があった場合でも事業の継続性を高めやすくなります。

 

Q3:台湾では、退職後も働きたいと考えるシニア層は多いのでしょうか?

A:はい。天下雑誌「銀天下」とDBS Foundationによる2026年の調査では、未退職の回答者の77%が、退職後もパートタイムや柔軟な勤務形態で働きたいと回答しています。一方、すでに退職した回答者のうち、実際に再就業している人は27%でした。

 

Q4:企業は、現地人材へのスムーズな引き継ぎをどう進めればよいですか?

A:主なポイントは3つです。①後継候補を早めに選び育成する、②退職前後のベテラン社員に顧問・メンターとして知識継承を担ってもらう、③正式な昇進前から候補者に実際の意思決定を任せる、という流れです。

 

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作者

Valerie Ong

リーラコーエングループ リージョナルマーケティングマネージャー

Valerieは、リーラコーエンのアジア地域におけるコンテンツ制作と市場インサイトの発信をリードしています。各国の専門コンサルタントチームと連携し、採用データ、給与基準、労働市場のトレンドを、台湾の雇用主とビジネスパーソンに役立つ実務的な情報へと整理しています。

その調査結果は、リーラコーエンの独自調査である「Salary Guide」「Hiring Pulse」
「Hiring Manager Survey」などをもとにしています。

 

參考資料

  • 国家発展委員会(National Development Council)― 台湾の超高齢社会に関する人口指標データ、2025年
  • 天下雑誌「銀天下」・DBS Foundation(星展基金会)「超高齢から“年齢にとらわれない社会”へ:壮年世代の再就業意向調査」、2026年1月16日
  • 2026年、日系製造業が直面する採用課題――なぜ台湾の日系企業は「即戦力エンジニア」の確保に苦戦しているのか、Reeracoen Taiwan社内市場調査、2026年8月

 

 

Disclaimer

This article is intended for general informational purposes only and reflects market observations at the time of publication. Labour market conditions, hiring trends, and salary benchmarks may vary by industry, company size, and economic environment. Statistics and data referenced from third-party sources are attributed to their respective publishers. Readers are encouraged to verify specific details and seek professional advice before making employment or business decisions. No part of this article may be reproduced without prior written permission from Reeracoen Singapore Pte. Ltd.