183社調査から読む台湾採用市場:定着率を上げる実践ポイント

183社調査から読む台湾採用市場:定着率を上げる実践ポイント
台湾で働く方や、台湾で採用を行う企業にとって、「年終ボーナスが何か月分か」は想像以上に大きな意味を持ちます。特に、日系企業や外資系企業でよく見られる「2か月分」という水準は、求職者や在職中の社員がオファーや現職を比べるときの、ひとつの目安になっています。つまり台湾の採用市場では、給与の金額だけでなく、「いつ・どのような形で」昇給や賞与が支給されるかも、重要な定着戦略の一部です。旧正月明けに転職活動が動きやすい台湾では、年終ボーナスの設計がそのまま離職防止にもつながります。
リーラコーエン台湾が発表した「2026 台湾採用動向展望レポート」では、2026年1月30日から2月13日にかけて、台湾の日系企業・多国籍企業の管理職層183名を対象に調査を行っています。そこから、台湾市場における昇給の目安、年終ボーナスの相場、そして業界ごとの離職リスクが見えてきました。
この記事では、2026年の台湾における給与・福利厚生と定着戦略を、日本人読者にもわかりやすく整理していきます。台湾で採用を行う企業の方はもちろん、台湾で転職を考える方にとっても、自分の市場価値を考えるヒントになるはずです。
給与と定着で押さえておきたいポイント
● 給与見直しは年1回が主流。ただし、柔軟に対応できる仕組みがあると、定着面でプラスに働きやすい:
86.9%の企業が年1回の定期昇給を行っています。一方で、11.5%の企業は年2回の見直しを実施しています。年の途中で外部から高い条件を提示されやすい技術職やキーポジションでは、この柔軟性が定着に効いてきます。
● 台湾全体の昇給幅はおおむね3%前後:
多くの企業は2.1%〜4.0%の範囲に集中しています。ただし、4.9%の企業は2025年に昇給を見送り、5.4%の企業は6%を超える昇給を行っています。業界や職種によって差がある点も、確認しておきたいポイントです
● 「2か月分」の年終ボーナスが実質的な目安:
35.0%の企業が2か月分の旧正月前後に支給される年終ボーナスを支給しており、台湾市場では最も一般的な水準です。求職者側から見ても、比較しやすい基準になっています。
● 業界によって給与構造は大きく異なる:
金融・保険業では、昇給幅はやや抑えめである一方、年終ボーナスを手厚く設計する傾向が見られます。一方、IT・情報サービス業は平均昇給1.75%、年終ボーナス中央値0.5か月と、報酬面の見せ方や定着施策がより重要になりやすい結果となっています。
● 市場平均に加え、採用面での魅力づけも重要:
平均的な昇給や年終ボーナスは、離職リスクを抑えるための大切な土台になります。一方で、優秀な人材に選ばれるためには、雇用主としての認知度、選考スピード、入社後のキャリアの見え方なども、あわせて伝えていくことが重要です。
在台日系・外資企業は、実際にどう給与を見直しているのか?
全体としては、「年1回の定期見直し」が台湾の日系企業・多国籍企業では最も一般的です。
|
給与見直し・昇給の頻度 |
企業割合 |
|
年1回、定期的に見直す |
86.9% |
|
年2回、ローリングで見直す |
11.5% |
|
固定の給与見直し制度なし |
1.6% |
年2回見直す企業は少数派ですが、半導体、エンジニア、IT、専門職など、採用競争が強い領域では大きな意味があります。たとえば年の途中で競合から好条件を提示された場合、年1回の制度だけでは、タイミングによっては対応が難しい場合もあります。
では、2025年の実際の昇給幅はどの程度だったのでしょうか。調査結果は以下の通りです。
|
2025年 実際の年間昇給幅 |
企業割合 |
|
0%(昇給なし) |
4.9% |
|
0.1%〜1.0% |
4.9% |
|
1.1%〜2.0% |
15.3% |
|
2.1%〜3.0%(最多) |
26.8% |
|
3.1%〜4.0%(次に多い) |
23.5% |
|
4.1%〜5.0% |
11.5% |
|
5.1%〜6.0% |
7.7% |
|
6.0%超 |
5.4% |
2.1%〜4.0%に入る企業は合計で約50.3%です。ここから見ると、台湾市場全体の昇給目安はおおむね3%前後と考えられます。
一方で、昇給なしの企業もあれば、6%を超える昇給を行った企業もあります。特に物流、専門コンサルティング、医療・福利厚生関連など、人材不足が強い分野では、より高い条件で人材を確保しようとする動きも見られます。
2026年 台湾主要業界の給与・福利厚生データ
全体平均だけを見ると、業界ごとの実態が見えにくくなります。採用予算を考える企業にとっても、転職を考える方にとっても、より参考になるのは業界別の水準です。
|
業界 |
平均年間昇給幅 |
年終ボーナス中央値 |
市場での見方・実務上のポイント |
|
半導体/電子部品 |
3.06% |
2.2か月 |
AI需要の追い風もあり、技術人材の獲得競争が続いています |
|
卸売・小売 |
3.27% |
1.8か月 |
台湾国内の消費動向や為替の影響を受けやすい分野です |
|
一般製造業 |
3.04% |
2.0か月 |
全体として安定。デジタル化投資も徐々に広がっています |
|
建設・エンジニアリング |
3.46% |
1.9か月 |
公共インフラや工場建設需要が採用を後押ししています |
|
金融・保険 |
2.50% |
4.0か月 |
「昇給は控えめ、年終は厚め」という典型的な構造です |
|
運輸・物流 |
3.70% |
2.0か月 |
現場を支える専門人材が不足し、昇給幅は高めです |
|
飲食・宿泊・観光 |
2.44% |
0.9か月 |
市場平均を下回り、人手不足への対応が課題になりやすい分野です |
|
IT・情報サービス |
1.75% |
0.5か月 |
昇給・年終の両面で低く、離職リスクに注意が必要です |
この表からは、少なくとも3つの特徴が見えてきます。
まず、半導体・電子部品関連は、昇給幅と年終ボーナスの両方で一定の競争力を保っています。AIや高性能電子部品の需要が続くなか、技術人材の獲得競争は今後も続きそうです。
次に、金融・保険業は、昇給幅こそ2.50%と控えめですが、年終ボーナスの中央値は4.0か月と高い水準です。毎月の昇給よりも、年末のまとまったボーナスで魅力を出す構造だと言えます。
一方で、IT・情報サービス業は注意が必要です。デジタル人材の需要は高まっているにもかかわらず、平均昇給1.75%、年終中央値0.5か月と、調査対象の中では比較的控えめな水準となっています。転職機会が多い職種ほど、報酬面の見直しが定着に影響しやすくなります。
人材の定着を左右する「年終ボーナス」の相場
台湾では、年終ボーナスは、社員にとって重要な待遇要素のひとつです。社員が「この会社に残るか」「次の機会を探すか」を考えるうえで、かなり現実的な判断材料になります。
2026年の旧正月前後に支給される年終ボーナスの状況は、以下の通りです。
|
2026年 年終ボーナスの支給規模 |
企業割合 |
|
支給なし/1か月未満 |
18.6% |
|
固定1か月 |
20.8% |
|
固定2か月(市場中央値) |
35.0% |
|
3か月 |
14.8% |
|
4か月 |
4.9% |
|
5か月 |
2.7% |
|
6か月以上 |
3.3% |
もっとも多いのは、やはり「2か月分」です。台湾の日系企業・外資系企業では、ひとつの市場目安として定着している水準と言えます。
企業側から見ると、年終ボーナスが1.5か月を下回る場合、技術職やシニア人材への説明や他の魅力づけがより重要になります。一方、6か月以上を支給する企業は、半導体、高付加価値の電子部品、大手総合商社、一部の外資系金融機関などに多い傾向があります。
今後については、55.5%の企業が2026年のボーナス規模を前年並みに維持すると見込み、26.8%の企業は緩やかな増加を予想しています。減少を見込む企業は14%にとどまっています。
💡 大事なのは「平均を出すこと」だけではありません
|
「自社の給与競争力を見直す企業にとって、2.1%〜4.0%の昇給幅と2か月分の年終ボーナスは、現在の台湾市場におけるひとつの参考水準と考えられます。市場水準を確認することは、離職のきっかけを減らすうえで有効ですが、それだけで採用面の競争力が十分に高まるとは限りません。人材競争が強まる台湾では、公平な報酬に加え、雇用主としての魅力の伝え方、スムーズな選考、そして明確なキャリアの見通しも重要になっています。」 ―― Reeracoen Taiwan 2026年 台湾雇用主展望レポート 専門家インサイト |
人事戦略として見ると、企業側には次の3つの示唆があります。
1. 市場全体ではなく、業界別に比較する:半導体企業が一般製造業の昇給幅だけを基準にすると、技術人材の採用環境を把握しにくくなる場合があります。
2. 2か月分の年終ボーナスを重要な基準として見る:特にエンジニアやシニア人材では、年末・年始の離職が採用コストを大きく押し上げることがあります。
3. 報酬が整った後は、雇用主ブランドとキャリアパスに投資する:候補者にとって「長く働くイメージが持てる会社かどうか」は、給与と同じくらい重要になっています。
2026年の台湾採用市場では、単なる欠員補充だけでなく、事業拡大に伴う増員も増えています。だからこそ、優秀な社員が一人離れるだけでも、代わりの人材を探す難度は以前より高くなりやすいのです。
🎯 まとめ
2026年の台湾における給与・福利厚生の相場は、以前よりもかなり見えやすくなっています。昇給はおおむね3%前後、年終ボーナスは2か月分がひとつの目安です。
ただし、ここで大事なのは、平均を満たしていれば安心という話ではないことです。市場平均は、あくまで離職リスクを下げるための土台です。企業が本当に採用・定着で優位に立つには、報酬の公平性に加え、候補者や社員に対して「ここで長く成長できる」と感じてもらえる環境づくりが欠かせません。
台湾で働く方にとっても、自分の業界・職種の相場を知ることは、キャリアを考えるうえで大きな武器になります。給与、年終、キャリアの見通しを総合的に見ながら、自分に合った職場を選ぶことが大切です。
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よくある質問(FAQ)
Q1:2026年の在台日系・外資系企業では、一般的な昇給幅はどのくらいですか?
A:Reeracoen Taiwanの「2026年 台湾雇用主展望レポート」によると、台湾市場では2.1%〜4.0%の範囲が最も多く、平均的には約3%前後がひとつの目安です。
Q2:台湾で最も一般的な年終ボーナスは何か月分ですか?
A:最も多いのは2か月分です。調査では35.0%の企業がこの水準を回答しており、台湾の日系企業・外資系企業における市場中央値として考えられます。
Q3:今回の調査で、年終ボーナスが最も厚い業界はどこですか?
A:金融・保険業です。年終ボーナスの中央値は4.0か月で、平均昇給2.50%に対して年終を厚めに設計する傾向が見られます。
Q4:IT・情報サービス業で離職リスクが指摘される理由は何ですか?
A:平均年間昇給が1.75%、年終ボーナス中央値が0.5か月と、今回の調査ではどちらも低い水準でした。デジタル人材への需要が高いなか、報酬面が市場期待とずれると、転職を検討されやすくなります。
Q5:市場平均の給与を出せば、優秀な人材を定着させられますか?
A:保証はできません。市場平均を満たすことは大切ですが、それだけでは採用優位にはなりにくいです。雇用主としての認知度、選考のスピード、入社後のキャリアパスも合わせて整えることが重要です。
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作者
Valerie Ong
リーラコーエングループ リージョナルマーケティングマネージャー
Valerieは、リーラコーエンのアジア地域におけるコンテンツ制作と市場インサイトの発信をリードしています。各国の専門コンサルタントチームと連携し、採用データ、給与水準、労働市場のトレンドを、台湾で採用を行う企業やビジネスパーソンに役立つ実務的な情報として整理・発信しています。
その調査成果は、リーラコーエンの独自調査である「Salary Guide」「Hiring Pulse」「Hiring Manager Survey」などをもとにしています。
参考資料
● 第15期 台湾雇用主展望レポート(Reeracoen Taiwan Co., Ltd.)

Disclaimer
This article is intended for general informational purposes only and reflects market observations at the time of publication. Labour market conditions, hiring trends, and salary benchmarks may vary by industry, company size, and economic environment. Statistics and data referenced from third-party sources are attributed to their respective publishers. Readers are encouraged to verify specific details and seek professional advice before making employment or business decisions. No part of this article may be reproduced without prior written permission from Reeracoen Singapore Pte. Ltd.


